12月5日(土)、Theあしかが学・後期「にんげん学入門―こころの学びのすすめ」の第2回目の講座が行われましたこの日の講師は上智大学神学部の瀬本正之(せもとまさゆき)先生で、「環境問題から見た人間」というテーマでご講演いただきました瀬本先生のお話はとても面白く、わかりやすく、受講生の方々も満足のご様子でした今回も先生のお話をまとめてみます
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●人間学とは
「私は人間です。」これは当たり前でまぎれもない事実であると同時に、人間としての価値や人間であるがゆえの課題も含んでいます。この世界に人間として生を受け生かされている私たち、果たして私たちは「人間らしく」生きているでしょうか。この問いが人間学の発露です。人間学とは「人間の尊厳」への問いなのです。
●環境問題と人間
地球温暖化、大気汚染、オゾン層破壊、砂漠化、異常気象などの環境問題は、現代に生きる人間にとって大変深刻な課題です。
この環境問題の解決策として、ある極論を耳にすることがあります。「地球上から人間がいなくなれば環境問題なんてなくなる。」確かにその通りかもしれませんが、やはりこの考え方はどこか根本的に違うような気がします。この考え方には「人間の尊厳」への問いが欠けているのです。
人間学の立場では、人間を3つの視点からとらえることができます。はじめに「個人」、次に「人類(人間性)」、最後が「人格」です。「個人」の視点は、「私のことは私が決めるから、あなたが勝手に決めないでね」という、ある意味消極的でせまい視点です。次の「人類・人間性」の視点は、「私たちのことは私たちが責任を持とうね」という、「個人」の視点に比べて随分積極的で広い視点です。最後の「人格」の視点は、「自分にはよくないところがあるなぁ、申し訳ないなぁ」という自覚、そして「自分の非をゆるしてくれる存在があるんだなぁ、うれしいなぁ、ありがとう」という感謝の視点です。
環境問題を人間学の立場で考えることは、「人類(人間性)」の視点と「人格」の視点でとらえることかもしれません。私たちは地球に対して無責任な行動をとることがあります。それでも地球は何も言わず静かにいのちを育んでいます。もしかしたら地球は無責任な行動をとった私たちをゆるしてくれているのかもしれません。地球のそのやさしさに感謝して、お返しに私たちも地球に対してやさしくなる。このような考えに立てば、人間は絶滅しないで環境問題と向き合っていけるのです。
最後に、地球のやさしさに感謝して地球にやさしくなるとはどのような意識なのか、3つ紹介します。
①自然の生存権…人間に都合がいいか悪いかは別にして、自然に存在するいのちを大切にしましょう。
②世代間倫理…今の私たちは将来の人たちのために自然のいのちを大切にしましょう。
③有限性の自覚…自然は限りあるもの、それは究極的にはみんなのためになるようにつかうんですよ。
環境問題に直面してその只中にいる私たちが「人間らしく生きる」とは、そのような意識を持つことなのではないでしょうか。