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2010年12月16日 (木)

平成22年度Theあしかが学(後期)講座レポート第2回

1127日(土)、「上智大学サテライト講座・Theあしかが学(後期)にんげん学入門―こころの学びのススメⅡ―」第2回目の講座が開かれましたsun今回は上智大学文学部教授、保健体育研究室の鈴木守(すずきまもる)先生が「身体のメッセージに寄りそって」という題で講義をしてくださいましたrun先生は、たくさんの笑いを織り交ぜつつ、最後には普段あまり意識していないけれどとても大切なことに気づかせてくださいましたcloverheart04

「身体のメッセージに寄りそって」

~社会が健康になるためにはどうしたらいいか、「身体(からだ)」という視点から考える~

1.「こころの学び」にあえて「身体」を語る意味

この講座のテーマは「こころの学びのススメ」ですが、先生はあえて「身体」という視点からアプローチします。近代の西欧思想からくる私たちの認識では、こころと身体を別物としてとらえがちです。難しい表現をすると心身二元論、簡単に表現すればこころの受け皿としての身体、つまり大事なのはこころであって身体についてはあまり興味を示さないことが多いのです。しかし、実際に私たちが何かを経験するとき、初めに身体が反応し次にこころが反応します。身体とこころは常に一緒にあり、切り離しては考えられない、だから「こころの学び」にあえて「身体」を語るのです。

2.学生の身体的変化―レスポンスができない

先生は学生の現状について、様々な事例を話されました。最近はコミュニケーションが成立しない学生が増えているそうです。コミュニケーションが成立しないとは、話を聞いてうなずいたり、相手に笑顔で応えたり、大抵の大人の人は身体にしみこみ身体化している反応ができないということです。先生はその反応を「レスポンス」と呼びます。

この大きな原因は人とのかかわりをあまり体験できないデジタル社会にあるようです。今の多くの学生たちにとって「友だちができる」とは携帯電話のアドレス帳に名前が登録されることです。登録数は500件くらいあるそうです。謝罪や感謝は相手の顔を見ずにメール1本で表現します。学生の話ではありませんが、授乳しながらメールを打つお母さんも多くいるそうです。このように、相手が同じ場所にいることを意識して、相手の表情を見ながらするコミュニケーションが希薄になっているため、いざ身体と身体のコミュニケーションが必要となる場面になると、身体が固くなっていて多くの学生は上手にレスポンスできないのです。

3.「理解する」から「感じる」へ

デジタル社会に慣れ親しんだ学生は「理解する」能力に長けています。携帯電話もパソコンもその他の電子機器も、機能をすぐに理解して使いこなすことができます。こういう今の世の中は「社会的に優位な感覚器」を最大限に利用する社会です。人間の感覚には、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚があります。先生によれば視覚と聴覚が「社会的に優位な感覚器」となるわけですが、視覚や聴覚から入る情報(色や形や音など)は科学的に分析でき、人々の興味を惹くためそのように分類します。一方、触覚、嗅覚、味覚から入る情報は科学の対象になりにくく、あまり人々の興味を惹かないので「社会的に劣位な感覚器」と分類するのです。

しかし、先生はこの「社会的に劣位な感覚器」で感じることが大切だとおっしゃいました。例えば「人」という漢字を思い浮かべてください。これは、本来の象形文字の成り立ちとは異なりますが、二人の人が背中合わせになって互いにバランスよく支え合っているように見えます。一方が力を入れすぎたりどちらかに頼りすぎたりすると成立しません。背中の感覚で相手を感じ信頼し、身体をやわらかくして、どれくらいの力をそそげばバランスよく立てるかを考えて上手にレスポンスし合う。すると正常な「人」の文字になるのです。このような身体で感じその感覚に自然に反応することは特段意識もしませんが、実はとても大切なことなのです。

以上のように、存在しているのが当たり前すぎて意識しない「身体」に光を当てて、その「身体」から生まれる自然な反応・レスポンスが上手にできれば、今の硬直化した社会がほど良くゆるんで健康になるのかもしれません。

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