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2008年10月

2008年10月17日 (金)

Theあしかが学―新たなる発見を求めてⅢ―レポート最終回―

 918日(木)、Theあしかが学第11回目の講座が開かれましたflair最終回となる今回は、上智大学から園部雅久(そのべまさひさ)先生をお迎えしましたwinkscissors園部先生は、「まち」について理論的に説明され、まちづくりの実践の基礎固めをしてくださいましたbud

テーマ:まちづくりとコミュニティ

問題提起:足利が目指す「まち」とは?

 人間が集まれば「まち」ができますが、「まち」とはどのようなものでしょうか。それは、人間が単独で生活することが困難あるいは不可能であるために寄り集まって営む共同生活の場です。

これら人間が営む共同生活には二つの様式があります。一つは自給自足の村落的生活様式、もう一つは都市的生活様式です。足利市は都市的生活様式に当てはまります。この都市的生活様式では、個人の力では処理しきれない共通・共同の問題の処理にあたって、専門家・専門機関が共同処理をします。簡単に分類すれば、農業は農家が、商業は商店が、工業は工場が、行政に関する事務は役所が、といった具合にそれぞれの機関が専門的なサービスを提供するシステムです。

 ただし、専門処理機関では処理し得ない問題もあります。例えば、災害のような非常事態への対応、高齢者福祉のような感情を重視する課題への対応は、いわゆる行政の苦手分野と言えます。そのような場合に必要となるのは、専門処理システムと住民主体の相互扶助システムの最適な組み合わせによる、新しい生活様式の創造です。例えば、行政の給食センターが食事を作り、住民のボランティアが食事を必要とする人へ届ける、といった取り組みです。園部先生はこのような新しい生活様式を「コミュニティ」と呼ばれました。

 このコミュニティの具体的な担い手として、町内会・自治会が挙げられます。町内会・自治会には、回覧板による情報伝達や広報など、行政における末端事務の補完機能があります。他にも、地域の運動会や祭り、慶弔行事における親睦機能、防火・防犯などの共同防衛機能、下水・街灯・道路の清掃や維持管理などの環境整備機能、陳情・要望などをまとめて訴える圧力団体機能、意見のとりまとめや苦情処理などの統合・調整機能があります。このようにみてくると、地域社会における町内会・自治会の重要性がわかります。

 また園部先生は、コミュニティの新しい担い手としてNPOを紹介されました。NPOは、ある特定の目的を達成するために個人が自発的に集まって結成する集団・組織で、NPOが取り組むのは様々な地域問題です。このNPOも地域社会において重要な組織と言えます。

 そして最後に先生は、地域住民組織の将来像として町内会・自治会とNPOの協働を提案されました。それは言い換えれば「地縁と知縁の協働」です。このように足利においても、町内会・自治会がよりよく機能し、NPOが活発に活動できれば、つまりコミュニティが活性化すれば、まちはもっとよいものになるのではないでしょうか。

結論:足利市が目指すのは、市民主体のコミュニティが元気な「まち」。

 5月から続けて参りましたこの「Theあしかが学―新たなる発見をもとめてⅢ―」のレポートも今回で終了となりますweepご愛読ありがとうございましたconfidentこのあしかが学の学びが、よりよい足利のまちづくりの一助となることを祈りながら…clover

Theあしかが学―新たなる発見を求めてⅢ―レポート第10回―

 94日(木)、Theあしかが学第10回目の講座が開かれましたhappy01今回は足利工業大学教授・和田昇三(わだしょうぞう)先生をお迎えしましたshineeyeshine

テーマ:足利の歴史と文化を活かしたまちづくり

問題提起:歴史と文化を活かしたまちづくりの提案と展望は?

●足利学校・鑁阿寺の世界遺産登録にむけて

 和田先生は、いかに足利学校や鑁阿寺が世界遺産にふさわしいか話をされました。足利学校や鑁阿寺のアピールポイントは、次の三つです。①日本最古の総合大学であること。②ヨーロッパに広く知れ渡っていたこと。また、③薪能など、今日の日本文化の原型は室町時代に確立したこと。そして鑁阿寺に代表される足利の諸寺院は、室町文化に少なからず影響を与えたと推察されること。このように、日本の教育や文化の源泉である足利学校や鑁阿寺は、日本を代表する世界遺産に値するのではないでしょうか。

●鑁阿寺西地区を対象とした取り組み

 和田先生は、「鑁阿寺西地区を対象とした取り組み」についても提案されました。足利市では平成16年度から30年度にかけて大日(鑁阿寺)西土地区画整備事業を実施しています。事業の主な内容は、渋滞緩和を目的として道路の拡幅をするというものです。しかし、昔からその地域に住んでいる方々には、慣れ親しんだ路地裏を残したいという思いがあります。そこで先生は、その思いを汲んで区画整理以外のまちなか活性化の方法を紹介されました。それは空地を活かして「まちなか博物館」をつくることです。そば、花火、お祭り、八木節など、足利を代表する事柄の博物館を街中につくれば、もっと観光のお客様を呼ぶことができるのではないでしょうか。

●足利市旧市街地活性化試案

 ―織姫神社と鑁阿寺西地区を活かした街づくり―

 この話は上の「鑁阿寺西地区を対象とした取り組み」の延長にあります。この案のコンセプトは、空き店舗など既存の施設を利用して、極力経費をかけないということです。空き店舗を博物館にし、織姫山に相田みつを美術館をつくり、旧東映映画館を足利歴史村にする。そして現在の観光スポットとリニューアルした施設を巡る散策ルートをつくります。例えば、「相田みつを探訪」「文化を訪ねて」「足利源氏探訪」などです。これらを想像してみると、一市民としても興味を惹かれるのではないでしょうか。

●歩いて暮らせる街づくり

 最後に和田先生は、「歩いて暮らせる街」について話をされました。これは平成18年に閣議決定されたことで、足利も通2丁目交差点を中心とする3地域で取り組んでいます。この取り組みを進める上で大切なのは、そこに住んでいる方の需要を優先することです。歩いて暮らせる街として、足利がより住みやすい場所になれば、市民の心にも活気が満ちるのではないでしょうか。

結論:これらの提案が実現され、まちが活性化すれば、市民にとっても観光客にとっても「足利」がより魅力的なまちになる。